賢治/やまなし
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概説

やまなしの初期原稿

やまなしの初期原稿
(第一葉の右半分) (「生誕百年記念 宮沢賢治の世界展」(朝日新聞社)より)

概説

 賢治が生前に発表した数少ない童話のうちの一つ。大正十二年四月八日付「岩手毎日新聞」に掲載される。死後手書きの原稿が見つかり、それが、新聞に掲載されたものと若干異なるため、研究者の間ではやまなしの初期形として扱われている。

いくつかの基本的な問題点

【十二月か十一月か】初期形が発見されて一番問題になったのは、二段落目において、従来形では「十二月」であるのに対して、初期形では「十一月」となっている点である。しかし、やまなしの実が落ちる時期や、初期形が手書き原稿であることを考慮すると、従来の「十二月」というのは新聞掲載の際の単純な校正ミスである可能性が高い。今では二段落目を「十一月」であるとする解釈が定説になっている。

【クラムボンとは】教育の現場も含めて、クラムボンが何であるかという議論が行われることがままある。いくつか説が唱えられ、中にはクラムボンという言葉の語源として有力なものもある。しかし、それはあくまで語源の問題であって、クラムボンそのものが何であるかということではない。「クラムボン」は読者が自由に想像できるからこそ価値があり、その意味を問うことは無粋なことだということで落ちついている。くわしくは「クラムボンの正体」をご覧下さい。

【なぜ題名がやまなしか】教育現場で子供達に題名を付けさせると決して「やまなし」という題は付けない。少なくとも五月と十一月の両方に登場する蟹に注目して、「蟹の兄弟」あたりが妥当だともいえる。もちろん個人的には「やまなし」のほうが好きだが、なぜ「やまなし」のほうがいいと思えるのか、そして賢治はなぜ「やまなし」と付けたのか、まだ決定的な説は出ていない。

私のホームページに掲載している「やまなし」「やまなし(初期形)」について

 出典はともに『新校本 宮澤賢治全集』(筑摩書房)です。基本的にはなるべく原文に忠実になるよう心がけました。しかし、メディアの制約上表示できないものもあります。

【ルビ】新聞に掲載された「やまなし」には多くのルビがついていました(「黄金」=きん、「上流」=かみ、など)が、ここでは一切ついていません。

【繰り返し記号】二文字以上の繰り返し記号(ひらがなの「く」が縦にのびた記号)は表示できません。ここでは、読む通りに入れ直してあります。つまり、「つぶ(繰り返し記号)」の時は、「つぶつぶ」と変えています。

【誤字など】たとえば「一緒」という言葉は、賢治は他の作品でもずっと、「一諸」と書いています。また、会話において句点があったりなかったりしていますが、これも原文に忠実に再現したものです。

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